
アメリカサラリーマン生活1年目・2012年夏
1年半ぶりに日本に戻り、リラックスした休みをとれました。
前年は博士論文の執筆に追われていて、この年の初めの年末年始は就職のための引っ越しがあったので長い休みが取れませんでした。
1年半ぶりだったので日本の夏の緑がとてもきれいだったのを覚えています。
私のパートナーはそのころ大阪でサラリーマンをやっていたので、彼女の大阪の家にしばらく滞在して、京都や四国のあたりを一緒に旅行しました。
私はそれまで日本にいたころは修学旅行以外で西日本に行ったことがなかったので、一概に日本と言ってもそれぞれ特徴があるものだと思いました。
日本でサラリーマンをやっていた時の上司が大阪出身で、東京は人が砂漠のようだとよく言っていたのですが、大阪に初めて行ってみてなんとなくその意味が分かりました。
大阪は人の距離が日本のほかの街と比較してなんだか近いですね。
その後東日本大震災の被災地に一人で行ってみました。
当たり前のように享受している日常も結構ギリギリなのかもしれないと思ったりしました。
Intelとムーアの法則
2年ごとに単位面積当たりのトランジスタの数は2倍になるというムーアの法則は有名ですが、法則といっても物理や化学に出てくる自然法則でなく、現実的にはIntelの開発目標です。
したがって黙っていても自然に2年ごとに単位面積当たりのトランジスタの数は2倍になるわけでなく、『2年ごとに単位面積当たりのトランジスタの数は2倍になるように技術を向上させられるようにがんばりましょう』というだけの話です。
CPUをはじめとした半導体はフォトリソグラフィという技術で製造されているのですが、原理的にはステンシルシートを使って文字や絵柄を紙にプリントするのと同じ仕組みです。
ステンシルシートを使った文字のプリント例
インクの代わりに、あらかじめ光に反応する物質が塗ってある材料に光を当てることで形を成形します。
ステンシルシートにあたるものをフォトマスクと呼ぶのですが、そのフォトマスクには光が通る部分と通らない部分があって、それによって作りたい設計を実現します。
ステンシルシートはプリントしたい形を切り抜けばいいだけですが、半導体製造においてはその大きさがナノメートル(1ミリメートルの百万分の1)というとても小さなスケールの話なので、光の通る道を物理法則に基づいてコンピュータでシミュレーションしながら希望の設計が実現できるようなフォトマスクをデザインする必要があります。
上の画像はWikipediaからの引用ですが、青線で描かれた形が目標だとしたら、緑線で描かれた形のようなフォトマスクを作ることで、実際には赤線で示された形がプリントできるという感じです。
このフォトマスクの形を計算するソフトウェアを作るのが自分のいたチームの役割でした。(Computational lithographyと言います。)
私が入社した時点で最低限ツールはできていて、1年目は誰かが書いたコードの実行速度を早くしたりメモリを節約できるようにアルゴリズムを工夫する仕事だけだったのでつまらないと思っていました。
会社の目標は、先ほど書いたムーアの法則に基づいて、2年ごとにトランジスタの数を2倍にしなくてはなりません。
つまり扱うデータ量も2年ごとに2倍になります。
したがって私たちのチームのソフトウェアも、それに応じて2年ごとに実行速度を2倍、そしてメモリの使用量を半分にしないと動かなくなってしまうので、そういう地味な仕事が必要になるわけです。
DAWを本格的に再開した
DAW(digital audio workstation)は音楽を作るためのソフトウェアです。
中学生のころから趣味でピアノを始めて、高校生のころからコンピュータで音楽を作るようになっていました。
高校生の時に仲の良かった友達がシンセサイザーやデスクトップミュージックのソフトウェアを持っていたので、貸してもらって遊んでいました。
当時はコンピュータも非力だったので、音源のクオリティはコンピュータで合成されたものであり、本物の楽器と比べてかなり低いものでした。
しかし15年ぶりくらいに触ったら、本物の楽器をサンプリングしたものが音源として使えるようになっており、素人でもそれなりに聞けるものが作れるようになっていてとても感激しました。
またソフトウェアも複雑になっているため、マニュアルを読んでその使い方を知るのはほぼ不可能に等しく、動画教材をオンラインで購入し使い方を覚えました。
動画が手軽に配信できるようになったことで、学習がこれまでよりもずっと簡単になったことを身をもって体感しました。
この頃から大体翌年の2013年の夏くらいまで、17時以降や週末はこれに夢中になっていて、同僚とのサッカーやパーティーも疎遠になっていき、引きこもりが加速しました。
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