
デジタルカメラの仕組み
写真はレンズを通して入ってきた光をセンサーが記録することで撮影されます。
センサーが捉えた光そのものを記録したデータをRawデータと呼びます。(Rawとは『加工していない』という意味です)
具体的にはこちらの画像の1番が私たちが普段目にする画像だとすると、2番の画像がRawデータにあたります。
画像データに少し詳しい方ならば、各ピクセルには赤、緑、青の3種類のデータが記録されていることをご存知だと思いますが、Rawデータの各ピクセルには赤、緑、青のうちのいずれか1種類のデータしか記録されていません。
センサー上で各ピクセルの担当する色は、こちらのべイヤーパターンと呼ばれる配置で決まっており、欠けている色の情報は周囲のピクセルから推測します。
つまり、あるピクセルの担当する色が赤だとすると、そのピクセルの緑と青のデータは周囲のピクセルデータから推測することになります。
このような方法でRawデータはカラー画像に変換されます。
このプロセスをデモザイク(demosaicing)と呼びます。
ここまでは科学の話です。
スマホやデジカメで撮った写真の色は人為的に作られたもの
デモザイクされた画像はカラー画像ですが、その色はとても淡く、私たちが現実世界で見る色とかけ離れています。
そこでデモザイクされた画像に対して、より現実世界の色に近づくようにさらに数ステップに及ぶ画像処理がなされます。
私たちが普段スマホ上で見る画像は、この画像処理がなされた後のものです。
この画像処理のステップは科学というよりもアートで、それぞれのカメラやスマホメーカが独自によりよい色を演出するために作ったものです。
プロのカメラマンは自分で画像処理をする
https://twitter.com/naokipentax/status/950438541573566465
こちらのツイートの2枚の写真は、左が使用しているカメラに元々搭載された画像処理を用いたもの、右が放浪写真人さんが独自の画像処理を施したものです。
おそらく現実世界の色は左のものに近いと推測されますが、先ほど述べたように左の画像も人為的に作られた色なので、究極にはどちらの画像も真実を写しだしているわけではありません。
アメリカの報道カメラマンは事実を歪める
ロイターは2015年にフリーカメラマンに対して独自の画像処理を施した写真を送ってくることを禁止しました。
先ほどのツイートの例で言えば、常に実際の色に近いであろう左の写真を提出することを報道カメラマンに義務付けたのです。
その理由の一つは画像処理にかかる時間を節約するためであり、もう一つの理由は道徳的観点からです。
『Rawデータに独自の画像処理を施した写真は事実を歪めている』と、ロイターは考えたようだと元の記事は伝えています。
先ほどの放浪写真人さんのように、完全にアートとしてそれをやるのは問題ありませんが、残念ながらアメリカの報道写真は大抵右のような独自の画像処理が施された写真です。
東日本大震災の際、アメリカで報道される被災地の写真は、日本人の自分から見てもどこか知らない外国を写したような不思議な写真ばかりでした。
悲惨さを強調するためにわざわざ写真を加工しているわけです。
本当の意味でドキュメンタリー映画など存在しない
私は前職でプロのカメラマンや映画の演出家と一緒に仕事をしていました。
それを通じて写真も映像もアートであって真実を伝えるものでは決してないことがよくわかりました。
しかし多くの人は写真や映像を事実と捉えます。
写真や映像というアートが平和を目的として使われればいいですが、敵愾心を煽るためにもいまだに使われているのは非常に残念なことです。
アメリカの映画館では『事実に基づいた』というような文言付きで、どこかの外国を敵として描いた映画の予告編が日常的に流されています。
いくらドキュメンタリーと名乗ろうとも、写真や映像は真実を写しだしているわけではないという認識が世界中に広がるといいと思います。
そして個人レベルでは、ニュースなどの間接的に目にする情報に対して不必要に感情を揺らすのを避け、自分の目で見たもの以外を信じないのが賢明な生き方だと思います。
この考え方は私がエンジニアになることを決めた一つの原点です。
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