
論点は『AIは東大に合格できないことを証明する方法』
私の書いた記事「ロボットは東大に入れるか」の新井紀子教授は研究者としてすごいは、11/9日現在、12,000人以上の方に読んでいただけたようで大変ありがたいです。
皆様のおかげで私の記事が新井紀子教授に届いたようです。
「本当は最初は東大合格できると思ってたくせに、ダメだとわかったら趣旨を変えた」というデマが飛んでいるようです。2012年から「東ロボ」で講演のご依頼を頂いていますが、「東大は入れないでしょうが、それなりの大学には入学できる。AIの技術限界の見極めが重要です」とお話しています。
— 新井紀子/ Noriko Arai (@noricoco) November 8, 2017
新井紀子教授が反論すべきはそこではありません。
もともとこちらの記事を書いたきっかけは私の以下の質問でした。
記事中で一つ気になったことがあります。"できないことを証明するためのプロジェクト"とあるのですが、数学的に『できない』ってどうやって証明するのですか?
— yu. (@yu_phd) October 25, 2017
『できる』ことを証明するのはデモをすればいいので簡単だと思うのですが、『できない』の証明はとても難しい気がします。
wikipediaのProof of impossibilityより引用です。
To prove that something is impossible is usually much harder than the opposite task; it is necessary to develop a theory.
私は数学が苦手ですが、数学が好きなのも事実なので、AIは東大に合格できないことの証明はこの場合にどうやるんだろう?と好奇心が湧いたのがきっかけです。
この質問に対する、数学的、科学的に納得のいく答えが新井紀子教授から返ってくるのを期待しています。
新井紀子教授はすごくなかった
『新井紀子教授は研究者としてすごい』とタイトルにありますが、皮肉で書いたわけではなく、本当にすごいと思っていました。
宣伝を大きくして予算を確保するということができる研究者は多くありません。
私も研究の世界にいたのでわかるのですが、いろいろと疑問のあるプロジェクトというのはよくあることで、新井紀子教授の場合は宣伝が上手いゆえに、悪目立ちして損をしている部分はあると思います。
そして、そもそも個人攻撃は私の意図したところではありません。
そこで最後の二段落では、私は『勝手な想像』をして新井紀子教授を擁護しました。
最後の二段落を丁寧に読んでいただければわかると思うのですが、新井紀子教授はプロジェクトの予算を確保するために、わかっていて変なことを言っている、というのは擁護のための私の『勝手な推測』です。
またこのような好意的な見方をしている方もおり、私も舞台裏はこんなもんだろうと思っていました。
センター試験で多数の人間に勝利したのでAIはダメ人間よりも有能なんて結論を出したら国民からの心証が悪くなる。しかしAIと研究者に特に落ち度がないことも事実。だから、(規格などありもしない)弱点でAIを貶めることで新井さんはAI研究者を守った。
— nommim (@uiiito) November 8, 2017
つまりこのAI disりを真に受ける人は研究から得られたいわゆるAIに劣る人で、このdisで安心してもらう。間違ってるとわかる人はつまりAIの(本当の)価値がわかる人でそもそも研究に反対しない。つまり、新井さんはすべての人からAI研究の許可を取り付けている。
— nommim (@uiiito) November 8, 2017
しかし残念ながら新井紀子教授から返ってきたお返事はこちらでした。
元ブログ記事はシェアしません(クリックによる広告収入が目的かと思うので。)
— 新井紀子/ Noriko Arai (@noricoco) November 8, 2017
女性研究者として30年生きていると、こういうタイプの不当かつ卑怯な扱いには慣れていますが、電車で痴漢にあうのと同じで、「慣れる以外にない」ということと「傷つくし不快だ」ということは別です。(続く)
女性研究者割合、女性管理職割合の向上を目指すのであれば、まず、こういう「無駄かつ、不当かつ、卑怯」な女性への攻撃をただちにやめてください。あなたが攻撃に使っているそのエネルギーは全方位的に無駄です。
— 新井紀子/ Noriko Arai (@noricoco) November 9, 2017
女性が幸せでない国で、少子化は解消されません。GDPも伸びません。
考え直して下さい
私の記事のどの部分に、「無駄かつ、不当かつ、卑怯な」女性への攻撃が含まれているかご指摘いただきたいです。
そもそもエアリプで対応するのは、女性、男性などの議論以前に人間としてやり方が卑怯だと思います。
私のUC Berkeley博士課程における指導教授は女性でした
つまり私のPh.Dは女性の研究者によって授与されたものであり、女性研究者を否定することは私自身の否定につながります。
このような私のバックグラウンドのどこに、『女性研究者への攻撃』という発想が生まれるのでしょうか?
そんなことをしたらまさに天に向かって唾を吐く行為です。
彼女は私をアメリカに招待してくれた、私の人生に非常に大きな影響を与えた人物の一人です。
日本からやってきた英語が下手な外国人である私に期待して、5年半もの長い時間をかけて私の学費と給料を出し、教育をしてくれた人です。
「あなたは十分に技術的なバックグラウンドがあるから、あとは英語のアカデミックライティングができれば研究者として独り立ちできる」
そう言われ続けて、1つの論文を書くだけでも、私の書いた文章に先生が赤ペンで疑問点を書き入れ、それを基に私が修正する、というサイクルを10回も20回も繰り返し、数か月かけて完成させていました。
ここまで献身的に学生の教育に時間を割く研究者は珍しいと思います。
卒業前に「最後の博士論文で、あなたの英語のライティングは完璧になった。もう何も直す必要がない」と言われたのは、私の人生の中でも最も印象に残る言葉の一つです。
まともな女性研究者は戦ってほしい
研究者の世界において女性はマイノリティです。
マイノリティであるがゆえに偏見が生まれやすいです。
したがっておかしなことを言っている研究者がたまたま女性であると、女性研究者全体に対する悪い偏見ができてしまう可能性があります。
私はその悪い偏見のせいで、科学に興味がある女性が研究の世界から遠ざかるのを危惧しています。
しかしおかしなことを言っている女性研究者がいれば、女性研究者自身で正すしかないと思います。
私のような男性がそれを指摘しても、おかしな人には男性というだけが理由で不当な反論をされてしまいます。
おかしな人を相手にするのは精神的に負担になるのはわかりますし、みんなが誠実であれば必要のなかった無駄な時間です。
それでも少しだけがんばってほしいです。
女性だから研究者やエンジニアに向いていないということは絶対にない
私の指導教授だけでなく、サラリーマン時代にも優秀な女性プログラマには何人も出合いました。
私のパートナーもPh.Dを取得したエンジニアです。
彼女とは既に10年近い付き合いですが、女性だからこんな不当な扱いにあったという言い方を一度もしたことがありません。
性別にかかわらず、あなたが数学や科学に興味があるのならば、ぜひ科学者やエンジニアになることを選択肢に考えてみてください。
↑記事をシェアしてください!読んでいただきありがとうございました。