コミュニケーションは本当に難しい
新井紀子教授はAIの専門家ではない 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という記事を書いて約一か月が経ちました。
15000人の目に触れたようなので、いろいろなコメントをもらっています。
まずははてなから。
氏には首肯し難い主張が多いが、これはブログ主の誤解。氏の主張は「各頂点からの距離の和が一番小さくなる点」が対角線の交点になることの数学的証明がスパコンに困難という話。対角線の交点自体は当然計算可能。
私が書いたプログラムが『単に対角線の交点を計算しているだけ』と勘違いしている人が多いのは私の書き方が悪いのでしょうか?
『このプログラムはGeometric medianが対角線上に存在するということはもちろん知らずに、あなたのコンピュータやスマホ上でリアルタイムにそれを見つけだしています。』と元記事では『もちろん知らず』を強調しておいたのですが、これで伝わらないとなるとコミュ障の私には厳しいです。
また、あの文章をどう読めば『証明しなければいけない』という解釈になるのかいまだに理解できないです。
新井紀子教授が提案するリーディングスキルテストです。
匿名なのでよかったら回答してみてください。
問題はこちら。https://t.co/Y5UPdoMjSp
— yu. (@yu_phd) March 16, 2018
正直、答えが分かりません。数学的には2つの選択肢は同じ意味だと思います。
— Willy 🌔米国大学教員 (@willyoes) March 19, 2018
Willyさんありがとうございます。
そもそも実際に問題が解けていることが確認できる時点で、エンジニアリング的には証明をする必要が見出せません。
時速100㎞で走っている車を目の前にして、その車が時速100㎞で走る能力があることを証明しろと主張することに意味があるのでしょうか?
計算量O(n)の極大化の話題に対してアルゴリズムによる計算量の極小化をもって解決可能!と主張してる。なんと言うか、ブログ主のコミュニケーション能力は極小だな。
何を言っているのか意味不明です。適当なテクニカルタームを並べて何か言った気になるのは、わかる人から見ると、残念な人に見えるだけなのでやめた方がいいと思います。
そもそもの主張の誤解もそうだしヒューリスティクスの説明もひどいし遺伝的アルゴリズムの例示も不適切(この場合は実質二分法で適当な仮定の下で確率1で収束してしまう)、新井先生はさすがにもうちょっとまともですよ
1次元の連続関数の解を見つけるアルゴリズムである二分法を、2次元の問題にどのように適用するのか具体的に説明してほしいです。そもそもが『距離の和が一番小さくなる点』を求めるのに論理も確率も統計も必要ないというのが趣旨なので、それをくみ取っていただかないで適当な仮定の下で云々とかいわれても困ります。
新井紀子教授はまともじゃないくらいに理系の教養がない
私としては、新井紀子教授が実用的なプログラムを書いたことがない人だというのは彼女の書籍を読めば一目瞭然だと思います。
しかし世の中の人誰もがプログラマではないですし、一口にプログラマと言ってもIT土方と呼ばれる人から、世界中で使われるAI関連のオープンソースソフトウェアを開発する人までピンキリなので、それを判断するのは多くの人にとってとても難しいということがわかりました。
私も新井紀子教授はもう少しまともな人だと思っていましたが、残念ながら彼女が根本的に理系の教養がない人だというエピソードを見つけてしまいました。
新井紀子著『こんどこそ! よくわかる数学』より引用です。(元ネタはこちら)
ガリレオのピサの斜塔での実験では, 重い鉛の玉も軽いアルミニウムの球も同じように落ちて, 同時に地面に着きます. 重さは落ちる速度には関係なく, どんなものでも落としてから1秒後には落下の速度は秒速9.8メートルになり, 2秒後には秒速19.6メートルになります. つまり, 1秒ごとに秒速9.8メートルずつ速度が上がるのです. x秒後の秒速yを式で表すと, y=9.8x(m/秒)となります.
y=9.8x(m/秒)の解釈が『1秒ごとに秒速9.8メートルずつ速度が上がる』というのは数学を持ち出すまでもなく物理的におかしいでしょう。
そんな奇妙な加速をしながら落下する玉を私は見たことがありません。
この本は中高生向けの本なのですが、読解力のある中高生はこの文章を読むと間違った知識を手に入れることになります。
なんとなく『1秒ごとに秒速9.8メートルずつ速度が上がる玉』が、どのような動きなのか気になったので以下にプログラムを書いてみました。
新井紀子教授の世界(Norico’s World)を私たちの世界(Our World)と合わせてご覧ください。
Norico’s Worldの玉の動きは明らかに私たちが地球上で観察する玉の動きと似ていません。
なぜこのようなおかしなことが起こるかというと、新井紀子教授の科学に対する姿勢は以下の通りだからです。
数学さえ分かっていれば、AIに何ができるか、そして何ができないはずかは、実物を見なくてもある程度想像がつくのです。(『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』より引用)
脳内で勝手に想像するのはご自由ですが、それをもって現実世界を断定するのは博士号を持つ大学教授の姿勢としては非常に問題のある態度です。
新井紀子教授は数式を見て勝手に間違った判断を下すのではなく、もう少し現実世界を観察し、実物を見て、自分の理解が正しいか確かめた方がいいと思います。
そもそも実物を見ようとしない研究者に存在価値などあるのでしょうか?
山本一郎さんにシェアされる
これは人間が導いた答えを分かりやすく表示するプログラムを作りましたということですか?
— Seiji (@furoneko) March 20, 2018
教科書が読めない子どもが大人になって大学を首席で卒業されてるんですね
— Seiji (@furoneko) March 20, 2018
だからあのプログラムは対角線の交点を計算しているのではないのです。
山本一郎さんの予測を受けて、勝手に納得しないでください。
お話にならない記事ですね。遺伝的アルゴリズムは最適解を保証するアルゴリズムではないのに、あたかも万能であるような書きっぷり。だいたいwikiから引用してドヤ顔するな、と。
— かみるん (@komilen) March 21, 2018
最適解を保証しないアルゴリズムで作られた天気予報を、連日ドヤ顔で報道している気象庁や気象予報士にまずは文句を言ってみたらいかがでしょうか?
またwikipediaが学術的な引用元として適切でないのは常識ですが、対応するwikipediaページ内にはかならずその議論の根拠となる論文が引用されているので、そちらをお読みになることをお薦めします。
もちろん私がブログで引用するときは必ず元論文に目を通しています。
一筋の光
たくさんの方の目に触れるということは、これらの有象無象の苦情を受けるのは仕方がないと思うのですが、その中で以下のようなすばらしい方を発見することが出来ました。
このプログラムは対角線を引いてるわけじゃないですよ。遺伝的アルゴリズムを使って対角線に一切頼らずにGeometric medianを求めるデモだと思いますが。(黄色い対角線は解が正しい事を示すためにあとから引いてるだけのはず)
— 無題 (@aiVriAhRgFtT) March 20, 2018
「人工知能の判断でそれが解だと導き出せてい」ます。それはなぜかというと遺伝的アルゴリズムで解を(ランダムに)出した後、その解がどの程度信頼できるか毎回計算してるからです(四辺の座標があれば計算可能)。その作業を何回もやれば精度の高い答えがでます(=Heuristic)
— 無題 (@aiVriAhRgFtT) March 20, 2018
AIはその設問から「対角線を引いた交差点が求められている解だ」と判断できない→はいできません
AIがその設問から解まで至れない→対角線を使わず遺伝的アルゴリズムのみで至れます
統計的推定→ヒューリスティックは統計とは別のはず。完全ランダムに点を打ってるだけだから— 無題 (@aiVriAhRgFtT) March 20, 2018
いや、この場合単純に計算できますよね。四角形の4つの頂点の座標とランダムに打った点Aの座標、これらがわかれば「その点」の信頼度みたいなのを数値化できます。あとは試行回数を増やすだけで信頼度が自動的に上がっていきます。どこまでやるかはケースバイケースかと
— 無題 (@aiVriAhRgFtT) March 20, 2018
う~ん統計の信頼区間とかは明らかにでてこないですよ。計算の世代数を増やせば精度が上がるだけでそれ以上でもそれ以下でもないかと
— 無題 (@aiVriAhRgFtT) March 20, 2018
私の意図を完璧に汲んでいただける方がいました。
@sukekiyo2376さんは神!
エンジニアリングの世界は政治が絡まない世界であってほしい
私はこのブログを通じて、勉強しかできないコミュ障はエンジニアになるのが一番だと繰り返してきました。
コミュ力ではなく動くものを作ることが何よりも説得力のある世界だからです。
MITのMedia Labの『Demo or Die』というモットーが好きです。
新井紀子教授のように「できない」という言葉を繰り返すだけの人間は本来相手にする必要がないのです。
東ロボのAIが実際に動いているところは誰も見ることはできません。私たちが見せられているのは、入試問題を解くアルゴリズムを構築するというプロジェクトとは本質的に関係がない、東ロボ手くんと呼ばれるボールペンで字を書くロボットアームの映像だけです。
YOLOのように、実際に動いているところを自分で確認できる近年目覚ましい他の機械学習関連の成果と対照的です。
私はエンジニアリングの世界は『Demo or Die』のわかりやすい世界であってほしいと願っているので、新井紀子教授のような不誠実な方に政治的に絡んできてほしくありません。
喫煙者が喫煙所だけでタバコを吸うように、政治的に活動したい人は政治の場でやってほしいと思っています。
エンジニアリングの言葉は、大衆を扇動して政治力を発揮するための道具ではありません。
騙される方が悪いという考え方は健全だと思えません。
しかしこの件に限らず、残念ながら世の中はきれいごとだけでは回っていないので、個人レベルで出来ることは絶えず知識をつけて自衛をすることしかないでしょう。
そのあたりに私の場合は勉強するモチベーションの一つを見出して日々を過ごしています。
ちなみに『1秒ごとに秒速9.8メートルずつ速度が上がる』Norico’s Worldの玉の速度を数式で書くのならば、 (m/秒)です。
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