
アメリカサラリーマン生活5年目・2016年春
2016年に入ってから、これまで作っていたVRカメラを使って実際に撮影をするというスケジュールが組まれました。
当時のプロモーションビデオがyoutubeにありました。
ちなみに3分30秒当たりで後ろを歩いている猫背の男は私です。(後でアップロードされたビデオを見て気づきました。)
このプロモーションビデオがリリースされたのは1月のようなので、撮影されたのはその前だと考えると、たぶんまだ何も完成していない時期だと思います。
ビデオの中にはそれっぽいカメラやサーバーが写っていますが、全部CGのフェイクです。
レンズが透明のガラスのようなものでおおわれているのは、VRカメラのデザインとしては技術的にあり得ないとCTOが貶していたのを覚えています。
まだ出来てもいないものをあたかも出来ているかのように見せるのは法律的にはどうなのかは知りません。
少なくとも私には道徳的によくない気がしますが、マーケティングというのはそんなものなのかもしれません。
世界は本当にカオスです。
実際にハリウッドに撮影に行ったのは3月でした。
映画の撮影というとキラキラしているものかと思いましたがとても地味でした。
俳優の人が何十回と同じシーンを演技させられているのが気の毒で、誰かが『もし自分の子供たちがムービースターになりたいとか言い出したらここに連れてこよう』と言っていたのを覚えています。
この撮影前までは一方向での撮影しかテストしていなかったのですが、マーケティングの要請で360度見渡せるVRにしたいと急遽変更がありました。
本来360度の撮影をしたいのならば、360度見渡せるカメラを作るべきですが、現在使えるカメラは一方向しか撮影できないので、カメラを回転させて無理やり360度をカバーするという方向になりました。
それをつなげるコードを書くのは自分の担当で、そのやり方は撮り直しができず技術的に不安定なので反対したのですが、私の意見は聞いてもらえませんでした。
直前に書き直したコードをほぼぶっつけ本番でテストしたのですが、幸いにも思った以上にうまくいきました。
しかし後悔しているのは、結果としてうまくいってしまったせいで、その一時しのぎだと思われた不安定な撮影方法でこれからも行くことになってしまったことです。
CTOは一方向での撮影でもうまくいかない部分がたくさんあるので、まずはそれを完成させてから360度撮影に移るべきだと考えていました。
自分も同じ考えだったのですが、私が中途半端に360度の撮影ができるようにしてしまったことを軽く責められたのを覚えています。
プロジェクトの規模が大きくなるにつれて、ビジネス的な決定で物事が進むようになり、4人のエンジニアで始めたころの楽しかった雰囲気はなくなってきました。
プロジェクトの中に複数のチームが作られて、エンジニア同士のつながりも希薄になっていきました。
公園で一人でランチを食べていた
この年の初めころには、会社を辞めることをマネージャーに伝えようと考えていたのですが、先ほど書いた撮影が入ったためそれが一段落するまでは続けることにしました。
前回書いたように新しくやってきたVPはモンスターで、彼が来たころから薄々とオフィスの雰囲気が悪くなってきたのは感じていましたが、この撮影の際に彼がヤバい人だということを認識しました。
アメリカに来て初めて他人に対して恫喝的にしゃべる人を見ました。
彼の直属の部下がみな気を使ってしゃべっているのがわかりました。
自分はそういう人間が嫌いなので、 かなりフラストレーションをためていたのですが、それをなだめてくれる優しい人もいました。
オフィスにいてもマネージャーがしょっちゅう話しかけてくるようになり、それが嫌で会議室にこもったりスタバに行って仕事をしていました。
会社はフリーランチだったのですが、持ち帰り用のボックスにケータリングを詰めて、公園の芝生の上で一人で食べていました。
今振り返るとちょっと病んでいたと思います。
glassdoorという会社のレビューサイトがあるのですが、当時のレビューを見てみると自分と似たようなことを感じていた人は少なからずいたようです。
結局ヤバい人の性格を変えることなどできないので、もし一緒になってしまったらそこから逃げるしか方法はないと思います。
とにかくいつでも逃げ出せるスキルと準備が心身ともに健康に生きる一番の秘訣だと思います。
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