『役に立つ仕事をしている=たくさんお金がもらえる』という勘違い

給料は会社への貢献度ではなく純粋に需要と供給で決まる

私がPh.Dを取得後、最初に勤めたのは大手ハードウェア企業でした。

その会社での私の肩書はソフトウェアエンジニアでしたが、ハードウェア企業なので当然会社の主役はハードウェアエンジニアです。

私の所属していたチームが開発するソフトウェアは、究極には似たようなものを社外から買ってくることが可能なものでした。

つまり私のチームはその会社には不可欠ではありませんでした。

それにも関わらず、マネージャー曰く私の所属していたチームは社内でも平均年俸が高く、会社のハードウェアエンジニアの平均的な年俸を大きく上回っていたようです。

その理由は単純に需要と供給の問題で、多くのお金を出さないとソフトウェアエンジニアは雇えないからでした。

既に3年以上前なので少し情報が古いのですが、私が過去にもらった最高のオファーはAppleの

(基本給 $135,000) + (RSU $105,000) + (その他401kマッチアップ等) = $250,000

でした。

これは個人的にはとても大きなオファーだったのですが、ここからわかるのはAppleはソフトウェアエンジニアを確保するのにとても苦労しているということです。

個人的な体感として、Appleはあまりソフトウェアエンジニアに人気がないように思えるので、おそらく他社と似たような給与ですと、他社に人材が流れてしまうのでしょう。私もそのときは別のスタートアップに行くことにしました。

 

お金が欲しいならば『需要>>供給』の職種と場所を見つける必要がある

一概にアメリカのプログラマと言っても、そこまで業務の割には給料が高くない業界があります。

映画やゲームなどエンターテイメント業界で働くプログラマです。

スターウォーズで有名なIndustrial Light & MagicやFIFAシリーズで有名なゲーム会社のElectronic Arts等は、激務かつ他業界のプログラマと比べて給料がそれほど高くありません。

なぜならこれらの会社で働きたい人はたくさんいるからです。

これらの会社で働いていた元同僚に聞くと、みな「若い時は楽しかったからいいけどもう戻れない」といいます。

自分もCG屋さんなので手前味噌なのですが、CGプログラマは数学や物理をはじめ必要とされる知識が多く、また要求されるソフトウェア実行速度も厳しいので、優秀なプログラマが多いと思います。

しかしそのような優秀な方も、供給が需要を上回る業界においては金銭的いい待遇を得られるとは限りません

お金が欲しければ『需要>>供給』の業界で働くしかないと思います。

 

仕事の難しさも重要さも給料とは関係ない

日本で研究者の給料が低いという意見はよく聞きますが、日本国内を見る限り、空きポジション数という需要に対して研究者になりたい人が多すぎるので、大きく給料が上がることはないでしょう。

特にその需要の多くが税金で作り出されているという点を今後の日本経済の展望と合わせて考えると、あまり有望ではない気がします。

数学者や科学者がやっていることが、社会には有益かつ多くの人には理解できない難しいことだとしても、『有益で難しいことをやっている=給料が高い』ではありません

官僚や検察官の知り合いも、会うたびに給料が安い安いと言っています。

官僚や検察官の人たちは、社会のとても大事な仕事をしていますが、『大事なことをやっている=給料が高い』でもありません

 

労働市場は国境を越えない

私が日本で就職活動をした場合、おそらくいただけるオファーは良くて先ほどのAppleの例の1/3くらいなのではないかと思います。

しかしそれは日本の会社の評価基準がおかしいのではなく、単純に日本市場では私と似たような能力のプログラマがそのくらいの給与で雇えるというだけの話で、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

日本のプログラマの給料をシリコンバレーのプログラマの給料に合わせるべきだという主張はナンセンスで、なぜなら労働市場はそれぞれの経済圏で独立していて、一物一価の法則が当てはまらないからです。

しかし逆にその市場の歪みがあるからこそ、そこにはArbitrage(裁定取引)のチャンスがあるので、お金が欲しい方向けにこちらのアメリカへの出稼ぎのすすめという記事を書きました。

ただアメリカでそこそこやれる人は、日本でもそこそこやれる人だと思うので、年収が3倍になったからと言って幸福度が大きくあがるとは限らず(参考:年収800万円を超えると幸福度は上昇しなくなる)、海外で暮らすいうことは得るものもあれば失うものもあるので、最終的にどうすべきかはそれぞれの判断だと思います。

『大事な仕事=給料が高い』ではないし、『給料が安い=大したことのない仕事』でもありません。

ただあるのは、お金が欲しければ人材不足の業界や国に行くのが手っ取り早いという事実です。

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プロフィール

yu. (Ph.D. UC Berkeley)   

慶応大学環境情報学部を首席で卒業。日本のベンチャー企業で働いたのち、アメリカにわたり、カリフォルニア大学バークレー校にて博士号を取得。専攻は機械工学、副専攻はコンピュータサイエンス。卒業後はシリコンバレーの大企業やスタートアップでプログラマとして働いていました。現在はフリーランス。毎日好きなものを作って暮らしてます。

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